Jam 2024年10月号
いうメリットも生まれていま す」とのことです。 一方で、生産者からは販売 日を遅らせることで、青果の 鮮度が落ちて価格が下がるの ではないかと懸念する声も上 がったそうです。 「品質については、集荷場の予 冷庫で適正に保管することで 鮮度を落とさずに出荷してい ます。生産部会には、物流を 取り巻く環境とともに、運送 業者の撤退や一層のコスト増 の可能性を丁寧に説明し、一 定の理解を得たそうです」 小林記者。 発想の転換で品質 と物流の効率性を両立した取 組みです。 関係者の努力により九州で は「物流の2024年問題」 はクリアできたように思える のですが、実際のところはど うなんでしょう? 「今のところ運送不能になる ような事態は起こっていませ ん。各地のJAや生産者、行 政の努力のおかげで、なんと か物流が回っているように見 えますが、 今後、何らかの影 響が出てこないとも限りませ ん 」と、小林記者。 「輸送効率を向上させるため にできることはまだあるはず です」と日本農業新聞九州支 所次長の田中賢司さんが言葉 をつなぎます。 「これまでは、産地ごとに運 送会社と契約していました が、JAのような組織が産地 を取りまとめて、共同輸送を おこなえば、大きな効果が見 込めます。また、域外の産地 との連携も有効かもしれませ ん。輸送トラックは、往路は 青果を満載していますが、復 路は空のコンテナを運んでい ることもあり納品先の産地の 荷物を積んで九州に運べば、 輸送効率は一層向上します」 政府が打ち出した「物流の 2024年問題」への対応策 は、【図 5】 の4つに集約され ます。たとえば、これまでの ように、生産地から消費地ま でノンストップで輸送するの ではなく、途中で荷を積み替 える。また、 デジタル技術 な どの導入により、荷役の効率 化を図る。輸送に使用するパ レットやダンボールも、標準 化し、トラックの積載率を向 上させる。さらには、輸送手 段を抜本的に見直し、トラッ ク輸送から鉄道や船舶を使っ た輸送に切り替える このような方向性に沿っ て、九州各地では、2024 年を迎える前からさまざまな 取組みが進んでいます。 小林 記者が取材した経験を元に実 例を説明してくれました。 「対策の類型 ❹ に含まれる モーダルシフトの実例として は、青果卸の北九州青果の取 組みが挙げられます」 北九州青果は、北九州市中 央卸売市場内に関西向けの青 果物の共同物流拠点を整備。 九州各地から青果を集荷し、 大型トレーラーに積み替え て、フェリーで 21時間かけて 神奈川県横須賀港へ運びま す。 船舶を活用することによ り、対策の類型 ❶ の「中継輸 送」、類型 ❸ の「共同輸送」を 実現し、トラックドライバー の負担を大幅に軽減すること が可能になりました。 JA宮崎経済連は、東京・ 中京向けの 青果物の販売日を 1日遅らせることで、物流に かかる負荷を減らそうとして います。 従来は収穫後3日目 には販売していた青果を、場 内で一晩保管し4目に販売 します。小林記者によると、 「これによって、輸送効率が向 上しました。加えて、荷物量 が輸送の前日に把握できるの で、配車や積み込み人員の手 配における無駄がなくなると 問題解決に向けた 九州各地の取組み (※)あわせてコールドチェーンの確保(予冷設備の整備等)が必要 九州産野菜の出荷先(地域別) 17.7 関東 21.1 近畿 6.1 中国 6.2 東海 5.3 その他 対策の類型 手法の具体例 長距離輸送の削減 荷待ち・荷役時間の 削減 積載率の向上・ 大ロット化 トラック輸送への 依存度の軽減 ◯標準仕様パレットの導入 ◯トラック予約システムの導入 ◯中継輸送(※) ◯集荷・配送と幹線輸送の分離 ◯共同輸送(※) ◯段ボールサイズの標準化 ◯鉄道・船舶への モーダルシフト 1 2 3 4 トラック輸送 その他 物流の2024年問題への対応策 05 Jam 2024October 3 九州農政局ホームページ「物流の2024年問題特設ページ」より 農林水産省大臣官房新事業・食品産業部「物流2024年問題に対応した先行事例」より % 43.6 九州 % % % % % 図 5 図 6
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